資産運用のすすめ

資産運用の必要性

 「貯蓄から投資へ」。このスローガンが政府の基本方針となってからしばらく経ちます。このスローガンに込められた政府の想いは、端的にいえば「銀行の預金や貯金をやめて、株式や債券、投資信託を買おう」、つまり『投資をしよう』というものです。

 ではどうして、「投資」が求められているのでしょうか?ここではその背景を少し見ていきましょう。

日本人は貯蓄が大好き?

 日本人はとにかく『貯蓄』が大好きと言われています。日本の個人の金融資産は約1,800兆円ほどありますが、そのうち50%以上を現金・預貯金で保有しています。これは、米国の12.9%や欧州の34.0%と比較しても突出して高い割合です。逆に、株式や債券、投資信託といった「資産運用」の割合は15%程度しかありません。日本人が貯蓄が好きなのか、それとも投資が嫌いなのか、もしくはその両方か、いずれにしても日本人が投資より貯蓄に重きを置いていることは確かなようです。

※日本銀行「資金循環の日米欧比較」(2019.8.29)より作成。

日本人の貯蓄好きは、国民性?

 日本人は貯蓄好きな国民性ではないかと言われています。国民性を表す有名なエスニックジョーク「沈没船ジョーク」を少しもじって言い換えると、こんな感じになるでしょうか。

 世界各国の資産家が集まる投資レセプションで、証券会社の営業担当者は投資を勧めます。さて、営業担当者が投資を勧める際に、資産家に放った言葉とは何でしょう?

▶︎ アメリカ人・・・「投資すればヒーローになれますよ。
▶︎ イタリア人・・・「投資すれば美女にモテますよ。
▶︎ イギリス人・・・「紳士は投資するものです。」
▶︎ ドイツ人・・・「規則ですので投資してください。」
▶︎ 日本人・・・「みなさんはもう投資してますよ」

 日本人はとにかく、「誰かに勧められたことや、みんなが既にやっていること」に取り組むのが大好きな国民です。つまり、投資でも「みんなもやってるよ」と言われれば投資に積極的になるかもしれません。しかし逆に言うと、日本人が投資に対して消極的なのは、お金の使い方(資産配分)について「自身で考え、リスクを取って行動し、その結果に対して責任を負う」という行動が苦手な国民ともいえます。

 子どもの頃にもらったお年玉は使うことなく、親に言われるがままに「貯金」してた人が多いのではないでしょうか。「なんで自分の欲しいモノを買えないのだろう?」「貯金すると自分にどんな良いことがあるのだろう?」と少しばかりの疑問を抱きながら…。また、そうして育った子どもも親になれば、また自分の子どもに同じように貯金することを勧め、こうして知らず知らずに「お金は貯金するもの」という文化が根付いた結果が、日本人の貯蓄癖に繋がっているのかもしれません。

貯蓄でもお金がふえた時代があった?

 今の若い人には貯蓄してお金が増えるなんて夢物語のように聞こえるかもしれませんが、過去の日本には、郵便局(現在のゆうちょ銀行)や銀行にお金を預けるだけで、預けたお金が10年で2倍なんていう、夢のような時代がありました。

 郵便局の貯金金利を見ると、高度経済成長期の70年代からバブル期の90年代初頭にかけて6%~7%と非常に高い水準であったことがわかります。銀行の預金金利もこれと同水準かそれ以上の金利となっていました。

※ゆうちょ銀行の定額貯金(期間2年以上)の金利。
※金利の改定日ベースでグラフ化。

 仮に、郵便局に100万円を金利7%で貯金したら10年後にはいくらになるでしょうか?答えは196万7,151円、約200万円です。貯金したお金が、単純に10年で2倍になって返ってきます。しかも、貯金なのでリスクはありません。今の時代、リスクゼロで10年後に2倍になってお金が返ってくる金融商品を目にすることがあれば、詐欺を疑ったほうがいいかもしれません。でも、現実にそんな時代がありました。

 ちなみに今、郵便局に100万円を預けたら、いくらぐらいになると思いますか?現在のゆうちょ銀行の定額貯金の金利は0.002%なので、これを元に複利計算すると、10年後には100万200円になります。えっ、200円!?さすがに計算間違いでしょ、と疑いたくなる程の低さですが、間違いではありません。100万円を10年間預けても、利息はたったの200円です。郵便局に行くのに電車を使ったら、利息分は簡単に吹っ飛んでしまいます。

 また、バブルの頃には貯金や預金だけでなく、割引金融債や利付金融債、貸付信託といった金融商品もありました。今では知らない人も多いかもしれませんが、いずれの商品もリスクは小さく、利率は定期預金よりも高いため、多くの国民が預貯金の延長線でこうした金融商品にお金を投じました。

超低金利時代に必要なこと

 90年代に入りバブルが崩壊すると、それまでの状況は一変します。株価は暴落し、土地の価格や住宅価格の急落で金融機関の不良債権が拡大し、多くの金融機関が破綻に追い込まれました。こうした危機的状況に対処するため、日本銀行はゼロ金利政策を導入しましたが、これにより日本の長く深い超低金利時代が始まりました。

 超低金利時代の幕開けとともに、郵便局や銀行にお金を預けているだけでは、お金はなかなかふえなくなってしまいました。先ほどの例でも見たように、貯金や預金でふえるお金は雀の涙より小さいものです。過去のように、リスクゼロでお金を10年預ければ2倍になるという時代は、もうやってこないかもしれません。

 超低金利時代に貯金だけではお金がふえない、それでも豊かな老後を送るためにお金をふやしていかなくてはならない、私たちはそんな厳しい状況に直面しています。

 こうした状況で私たちに求められていることは、お金を預貯金に置いておくのではなく、お金を働かせることでさらにお金をふやす、『資産運用』の考え方です。この『資産運用』が、豊かな老後を送るための大きなカギとなってきます。

本日の投資格言

安全第一では利殖家になれない
 安全第一で行くなら貯金や債券への投資ということになるが、それだけでは財産を大きく殖やすことは難しい。やはり株式や不動産など、大きな値上がりが期待できるものへの投資が、財産を殖やすためには欠かせない。資産を大きく殖やすためには、ある程度、リスクに挑戦する積極性も必要なのだ。
【株で勝つ!相場格言400 (日本経済新聞出版)】

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